クモと息子とわたし

 唐突だけども、僕はクモがさわれない。いや、さわれなかった。小さいぴょんぴょん跳ねる家グモですらさわれなくて、家の中に出るとそのまま放置するか、紙の上に誘導して外に放るかで対処してました。

 ところが子どもができて、息子が2歳ぐらいになった頃。いつも虫が出ると僕にお呼びがかかって、「なんとかしてー」と言われていたところが、それより早く息子が駆けつけるようになっていた。見ると、小さな家グモなんかは、さっとわし掴みして、外にぽいっと放り投げてる。

 殺さないところもいかしてるし、それをなんてことない風にさっと無造作に片付けてしまえるところもかっこいい。
 正直我が子ながらちょっと憧れて、以来家グモくらいであれば、自分も素手で掴んで外に捨てられるように訓練して。今ではためらいなく、それを実行に移すことができるようになりました。

 そんな息子も今や中学2年生。それなりに大きくなって、それなりに生意気にもなり。
 そして田舎にぽつんと一戸建てな我が家では、さいわいGの姿は宅内で確認されることはないながら、アリとかコガネムシとかカメムシとか小さいハチとかカネタタキとか、様々な虫が現れては「きゃーーーーー虫ーーーーー」という悲鳴が度々あがるのです。

 昨日もそんな感じで「きゃーーーー」と聞こえてくる叫び声。ああ、はいはい、今行きますよと。

 あの日憧れた息子はどこへ……。

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