
内蔵のペン機能が目当てで購入したThinkPad X1 Yoga(以降Yoga2019)。当然そのペン部分についてはこだわりが色々あるので、もうちょっと使い込んでからまとめようと思っていたら、書かないままあっという間に2カ月以上が過ぎてしまいました。
これだと完全に書かないまま忘却の彼方ってことになりかねないので、現状でわかっている点をまとめておきたいと思います。
外観と充電機構
Yoga2019の内蔵ペンがこちら。アクティブペンなのでバッテリー駆動式になるわけですが、お尻側の接点を介して本体収納中に常時充電されているため、「いざ使おうという時に電池切れ」ということはありません。

細身でありながらペン自体の剛性は高いので、たとえばスマホのGalaxy Noteで見られるような「細い上に筆圧をかけるとしなるもんだから書きづらくてしょうがない」という使いづらさはなく、総じて内蔵ペンとしては上々の質感です。
側面のボタンは2ボタン式。Wacomのドライバが対応していますから、両ボタンともに好きなコマンドを割り当てて使うことができます。自分はたいてい「スペースキー」と「右クリック」を割り当てるんですが、画面のタッチ操作側でパンやスクロールはまかなえてしまえるので、「消しゴム」を割り当てとくのもいいかなあとお試し中。

ただ、ペン軸と面一になっちゃってるので、目視しないとボタン位置がわからないことも多々。正直ボタンに関しては、あまり使いやすいとは言えません。
ペンの精度と位置特性
Yoga2019がサポートするペンの規格は、Wacom AES2.0となります。筆圧4,096段階に対応したアクティブペンで、ペンの傾き検知も可能。ただ、付属の内蔵ペンには傾き検知機能はついてません。
したがって内蔵ペンで画面をポイントした場合は、特に角度によってポイント位置が補正されることもなく、常にカーソルとペン先の位置関係はこんな感じです。

AES方式特有の、少し持ち手側に入り込む(ペン先で隠れてしまう)位置にカーソルが表示されます。ちょっと見づらい。
AES方式としてはかなり優秀で、その特徴である画面全域でズレがない特性はそのまま。一方で、ホバーカーソルの遅延問題や、ペンが接地した時にポインターがジャンプするような挙動についてはかなり抑制されています。気にしてその現象を注視しない限りは、多分気づくことはないと思います。
残念ながら吸着現象については「ああAESだね」という感じ。ゆっくり描いた時、線はゆらゆらと不快なブレを生じさせて安定しません。
ペンの読み取り精度
続いてはスキャンレートです。スキャンレートとは、秒間にどれだけの頻度でペンの座標を読み取っているかを示す値で、Point Per Second(pps: 秒間あたりのポイント数)であらわすことができます。
測定には、下記Clover Paintの中の人さんが配布してくれているツールを使わせていただきました。
Tablet PC用のスキャンレート表示プログラムを作りました。
— Clover Paint (@Clover_Paint) June 18, 2013
前と大体同じですが、スキャンポイント表示が面倒なのでまだ作ってません。作りかけなので今回はソースなしで
Windows/Tablet PC専用ですhttp://t.co/iOg7A7nGl4
測定結果がこちら。平均7484μ秒で読み取っているようです。つまり、0.007484秒ごと(1μ秒は0.000001秒)に1回スキャンしているということになるので、1/0.007484=約133.6ppsとなります。

これがどの程度のスキャンレートかというと、下記のioさんのサイトにあるレポートが参考になります。
これによると、Cintiq Pro 24で計測した場合、標準モードが119.4pps、文字認識モードが180ppsとなるようです。今回のYoga2019はその中間あたりと考えると、Cintiqレベルに比肩するまずまずの読み取り精度だと言えるのではないでしょうか。
急な直しに対応する程度なら十分だけど……
総じて優秀な作りなだけに残念なんですが、やはりAES方式特有の吸着現象が痛い。ペンの反応速度や位置精度は十分ながら、この現象がすべてをぶち壊しにしてくれています。ゆっくり描くと目に見えてガクガクと線が揺れるので、これ単体で本番環境として使うのはまず無理かなあ……というのが正直な感想です。
ただ、出先や旅行先で急な修正作業を迫られた時を考えると、通常使っているグラフィックソフトをそのまま使えるマシン環境と、持ち歩くことを意識することなく常時ペンが備わっている安心感は大きいです。いちからすべてを描こうとは思えない(ブレる描線の補正に手間がかかるから)ペンですが、ちょっとした修正や、限られた範囲の描き直し程度なら問題なく対応できます。
そして、本気モードの仕事を持ち歩きたい用途には、どうせ本気モードの時はサブ液晶を含む2画面体制が欲しくなるわけですから、小型の液晶タブレットを組み合わせればいいわけです。
自分はそこに余りのCintiq13HDを組み合わせていますが、今ならWacom Oneもいいですよね。
電源仕様を見る限り、これだとYoga2019の側面USBポートからの電源供給でまかなえそう。コンセントが必要ないというのはかなり魅力的で、正直少し買い換えたい気分です。
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