先週木曜日、東京の表参道でAdobe Frescoのお披露目イベントがありました。
Adobe Frescoというのは、Adobeが新しくリリースしたiPad用の描画ツール。水彩表現やベクタブラシなどを有していて、アナログとデジタルの垣根を越えた様々な表現を可能にする優れもの。
多分Adobeさん的には、今後PhotoshopとIllustratorと並び立つ3本柱のひとつに据えるつもりなんじゃないだろうかと思えるほど、力を入れているように個人的印象を抱いています。
その力の入れ具合を反映してか、会場はこんなおしゃれなところ。受付を済ませ、おしゃれグラスに注がれたウエルカムドリンクなんかをいただいたりしてると、なんかこう「俺もおしゃれなイラストレーターの一員ですよ」みたいな気分になってくるんですから、なんというかさすがだなあAdobe。
YOUCHANさんだ!
この日は開発に協力してきたイラストレーターさんが、どのようにFrescoを活用しているかを最初に話すようになっていて、4人の方がそれぞれ登壇して「おー、なるほどこうやって使うと確かにすごい」と思えるためになるお話を披露してくれました。
そんな中、なんといっても自分的に要注目なのがYOUCHANさんですよ。
本物だ!はじめて見た!
傍らのディスプレイには実際のFrescoの作業画面が表示されていて、どうやってこの風合いを出しているのか目の前で実演されていて、それがもう参考になりまくりなの。てっきりIllustratorのグラデツール使いまくりだと思ってたのに全然違う。もうメモを取りまくりですよ。
…と、1人興奮して描いてても「なんのこっちゃ」だと思うので、ちょっとだけ昔話をつらつらと綴らせていただきます。
憧れた向こう側の景色
むかーしむかしですね、「イラストレーターとかなれたらいいなあ、かっちょいいなあ」「Mac欲しいなあ」なんてことを思いながら、毎日パチンコばかりしているダメ大学生がおりました。
パチンコでお金をすっては夜間の日雇い労働に飛び込みで入ってお金をやりくりする腐れた毎日。そんなもんで、当時高嶺の花だったMacはおろか、牛柄模様のお安いWindowsパソコンですら買えるようなお金は持ち合わせていませんでした。
当時は今とちがってネットなんてものはなく。したがって活字に飢えるたちの自分には、雑誌は何度も何度も読み返して楽しむお友達。白黒ページの通販広告ですら、隅から隅まで読むのが通例で、中でも読み狂っていたのがバイク雑誌とMac Fanでした。
なんでMac Fanなのかというと、この雑誌に寄稿しているイラストレーターさんたちの絵がとにかく自分好みだったんです。こんな絵が描けるようになりたいなあ…そう思いながら見る紙面。自分にはまったく手の届かないMacを使い、惚れ惚れする絵を描き、それでお金を稼ぎ、こうして雑誌に載っている。
ただ繰り返し眺めるしかない自分には、ほんとそれは憧れの光景で、いつしか自分の中には「憧れイラストレーターさん枠」というカテゴリが作られて、紙面の向こう側で活躍するイラストレーターさんたちの名前が深く刻まれていきました。
その後、勉学にもまるで懸命さを持たない自分は、なんの取り柄もないまま社会人となり、「イラストレーター憧れるなあ」と思ったままやっぱり勤勉さがないからイラストの一枚もまともに描かず終いでプログラマとなり、ブラック企業でひーひー言いながら、Mac Fanの発売日になると書店に行ってイラストレーターさんたちを眺める生活を送っていました。
つまりその憧れイラストレーターさん枠にいる1人が、YOUCHANさんだったわけです。
その後、この腐れたナマケモノにも紆余曲折があって、一応は肩書きにイラストレーターとぶら下げるようになり。
Twitterってすごいですよね。いつの間にかYOUCHANさんと相互フォローになって時折相手していただけるようになって、そして今回。一応ネットでやり取りしてるから名刺交換をお願いしても迷惑じゃないはず…と思いながら声をかけたら、名刺を見てですね、「きたみさんじゃないですか!」と同業者の仲間を呼ぶようなトーンで応えてくれたんですよ。
この日、ずーっと憧れだった向こう側の景色が、向こう側じゃなくなりました。
なんというか、大学生の頃の自分にめちゃくちゃ自慢したい気分。幸せな時間でした。
すごく良いイベントでした
肝心のイベントの方はどうだったかというと、これもすごく良い内容でした。
登壇した4人のイラストレーターさんの個性が絶妙にばらけていて、だからこそ、その幅広い作風をすべて受け止めてしまえるFrescoすごいなと素直に思えましたし、その後の軽食&歓談タイムも、混み合いすぎずかといってガラガラでもないという会場の広さと来場者数のバランスがよくとれていて、盛況な感じは受けつつも移動は容易く、目当ての登壇者さんのところに行って話すこともさほど苦になりません。
それに一役買っていたのが、この軽食スタイル。
めっちゃ可愛くないですか?
お皿に取り分ける手間もなく、片手で取ってパクッと食べられる形式になっているので、片手にお酒を持ちながらひょいパクひょいパクしていける気安さがすごく良かった。これだとずっと手元にお皿を抱える必要がなくなるので、そのための場所を確保する必要もなくなり、結果会場内を自由に人が行き交いできていたと思います。
タッチ&トライコーナーも設けられていましたが、それについては家に帰ればいくらでもさわれる環境があるからパス。
あ、そうそう、最後にお土産をいただきました。
なんとお菓子とモバイルバッテリーのセット。
俺って業界人だからモバイルバッテリーもさらっとAdobeノベルティだったりするんだぜーふふん……みたいな顔で愛用させていただきたいと思います。なんせ憧れだった向こう側に行きましたからね。そうなんですよ、ほんとずっと長いこと、僕ってやつは眺める側の人間……だったんだよなあ。
帰りの電車はただしみじみと、明日から仕事がんばるぞーって思う夜でした。